SSTは、困る場面で使える選択肢を増やす練習です。正しい振る舞いを押しつけたり、叱って直したりするものではありません。本人が必要と感じる場面を選び、断る・助けを求める方法も練習します。
この記事で分かること
- SSTの目的は「普通に見せる」ことではなく、本人の選択肢を増やすことです。
- 説明、見本、短い練習、振り返りの順で行います。
- 「分からない」「手伝って」「やめて」「断る」も大切なスキルです。
- 強い不安や対人トラブルが続く場合は、専門家へ相談します。
SSTの基本
SSTはSocial Skills Trainingの略で、人とのやり取りや生活場面で役立つ行動を、説明やロールプレイを通して練習する方法です。医療、福祉、教育などで行われ、対象や実施方法はさまざまです。
マナーを暗記させることや、失敗を叱責することとは異なります。本人が困っている場面を選び、複数の方法を試し、「自分ならどれを使いたいか」を考えます。周囲の大人が環境を変えることも同時に必要です。
家庭でできる短いロールプレイ
5分で終える4段階
- 場面を一つ決める:宿題が分からない、ゲームを断りたいなど
- 大人が見本を二つ示す:言葉で伝える、カードを見せるなど
- 本人が選んだ方法を一回試す:完璧さを求めない
- 良かった点を一つ確認する:次に変えるのも一つだけ
本人が疲れているときや実際のトラブル直後に無理に練習しません。「今日は見本を見るだけ」「やらない」も選べるようにします。
練習できる伝え方の例
| 場面 | 短い言い方 | 言葉以外の方法 |
|---|---|---|
| 分からない | 「最初だけ教えてください」 | 分からないカードを置く |
| 手伝ってほしい | 「ここを一緒にやって」 | 助けてほしい箇所を指す |
| やめてほしい | 「それはやめて」 | 距離を取り、大人へ知らせる |
| 断りたい | 「今日はやらない」 | 用意した断りカードを見せる |
目を見る、大きな声で言うといった形を全員に求めません。安全に伝わる方法なら、文字、ジェスチャー、支援者への合図も選択肢です。
失敗した場面の振り返り方
「何が悪かった?」ではなく、「その前に何があった?」「どの時点なら助けを呼べそう?」「大人が変えられることは?」と順に整理します。相手側の行動や環境にも問題がある場合、本人だけに練習を求めません。
避けたいこと
嫌がる場面を何度も再現する、人前で練習させる、できなかったことをからかう、表情や話し方を「普通」に見せることだけを目標にする対応は避けます。
専門的な支援につなぐ目安
対人場面への強い不安、いじめや暴力、学校生活への大きな影響、本人の強い自己否定がある場合は、家庭だけで練習を続けず、学校、スクールカウンセラー、医療・福祉の専門家へ相談します。本人がSSTを望まない場合も、その理由を支援者と考えます。
ネクスタの授業では、「分からないと言う」「休憩を相談する」「次の課題を選ぶ」といったやり取りを自然に練習できます。ただし、これは専門機関が計画して行うSSTの代わりではありません。強い困りには専門家と連携します。
本人が読んでいる場合
SSTは、周りに合わせるための試験ではありません。自分を守る言い方や、助けを求める方法を増やす練習です。合わない練習は「別の方法にしたい」と言って大丈夫です。
「助けを求める」を練習する例
宿題が分からない場面なら、まず本人が止まりやすい時点を決めます。「問題文を二回読んでも分からない」「3分考えても式が出ない」など、助けを求める合図を具体化します。次に、「最初だけ教えて」「例を見せて」の二つから使いやすい言葉を選びます。
大人は生徒役になり、わざと一度聞き返します。本人は同じ言葉を繰り返す、指差す、カードを見せるなど別の手段を試します。最後に「伝え方」だけでなく、大人がすぐ応じられたかも振り返ります。支援を求めても無視される環境では、本人だけを練習させても役立ちません。
実際に使えた日は、大げさに褒めるより「必要なところを伝えられたね」と事実を返します。使えない日があっても、練習不足と決めず、相手、場所、疲れを確認します。
この記事の使い方
この記事は、本人の状態を判定するためではなく、相談や対話の準備に使うものです。気になる項目をすべて実行する必要はありません。本人に「どれなら負担が少なそう?」と聞き、一つ選んで試します。うまくいかなかった場合は努力不足と考えず、量、時間、環境、説明方法のどこを変えるかを相談してください。
医療・心理・教育の個別判断が必要な内容は、学校や公的窓口、検査を実施した専門家へ確認します。記事を印刷・共有するときも、本人に関係する情報をどこまで伝えるかを一緒に考えましょう。
参考資料
情報確認日:2026年7月27日。制度・検査情報は変更されることがあります。個別の判断は実施機関・専門家へご確認ください。